上棟には特別な思いがあります。
KIKAKUNAの理念を反映するように
大手の住宅メーカーも、
地域の工務店も、
設計力に長けた設計事務所もおそらくやってない
建て方を独自にやっています。
ささやかな試みばかりですが
少しずつ蒔いた種は
どれも他にはない綺麗な花を咲かせていると
自負しています。
そんな上棟で工法だけは頑なに昔ながらのものを
使い続けていました。
大方の木造住宅が採用している在来工法です。
今回はその工法も思い切って
新しく金物工法に変更しての上棟です。
在来工法は木材に「鎌継ぎ」とか
「蟻掛け」といった加工をして
骨組を組んでいく工法です。
昔は木だけで骨組を組んでいましたが
今はさらに接合部を補強する形で
金物も設置します。
在来工法もきっちり金物を使うのですが、
新しい金物工法と明確に分けるため
金物も使う今も在来工法と呼んでいるんですね。
っで、今回採用の金物工法は
「鎌継ぎ」とか「蟻掛け」部分を金物に
置き換えた工法です。
つまり「鎌継ぎ」とか「蟻掛け」のような
加工をしない工法と言えます。
いままでずっと在来工法を採用していた理由としては
複雑な凹凸をした木材が見事にかみ合う様が
コンクリート造や鉄骨造にはない心地よさを
感じさせてくれるからです。
昔とは違いその複雑な加工は大工さんではなく
機械が行いますが、
それでも海外にはない日本ならではの匠の技を
感じるんですね。
これぞ木造、これこそ木造と。
金物工法は木造らしいその部分を鉄に置き換えるわけで
それは柱や梁のないツーバイフォー工法で感じた
拒否感に近いものがあり、
味見することもなく
長年食わず嫌いをしていたわけです。
金物工法の採用は寒い朝に布団から抜け出すのと
同じように私にとって勇気がいるものでした。
ちなみに費用も金物工法のほうが高く、
30坪程度の建物でおおよそ40万円程度
在来よりも高くなります。
そんな好みではなく高い金物工法を
採用することにした理由、
それは2022年の尼崎市の家から採用した
壁のパネル化との相性の良さです。
在来工法の場合、補強金物を設置するために
工場で組まれた壁パネルの一部を欠き取らなければ
いけない箇所が出てきます。
↓こんな感じ
壁のパネル化は現場作業の効率や精度をUPさせ
工期の短縮、現場でのごみを削減することによる
現場美化を目的に採用しているにもかかわらず、
その欠き取る作業が壁をパネル化する良さを
軽減させてしまうのです。
金物工法は金物が柱や梁の中に入ってしまい
表に出てこないため
壁パネルが綺麗に納まり
あとで欠き取る必要もありません。
↓たつのモデル
金物が見えず壁パネルの欠き込みなどもないので
とてもシンプルな骨組。
今回初めて金物工法を採用してみて
壁のパネル化とピタリとマッチし
それぞれのメリットが完全に発揮されたように
感じました。
スムーズかつシンプルに上棟を終え
おそろしいほど整った現場の中で感じた
言葉で表現しにくい感動は
それまで拘っていた木造らしさを無くした
後ろめたさに勝るものでした。
金物工法は私が考えた新しい種ではありませんが
KIKAKUNAの家に綺麗な花を咲かせる種でした。